坂口安吾の同時代における受容――エグジスタンシアリズムの様相をふまえて――

藤田絵理香

 安吾のサルトルへの関心は傾倒と呼べる程強くはなかったが、彼の作品は「肉体文学」と呼称され、サルトルの思想と比較されてきた。昭和20年代において、安吾の作品がエグジスタンシアリズムの文脈で読まれていたことは確かである。
 本発表では安吾受容をエグジスタンシアリズムの観点から論じていく。
 安吾自身の言説や安吾作品への同時代評を取り上げ、サルトル流行期を生きた読者達が安吾の作品にエグジスタンシアリズムを見出したことの要因とその過程を探る。日本におけるエグジスタンシアリズムの流行はサルトルの思想の移入によってもたらされたものだが、今回はサルトルに限らず、他の思想家・文学者と安吾の関係についても論及する。これらの方法を通して、〈思想〉としてのエグジスタンシアリズムと〈現象〉としてのエグジスタンシアリズムの差異を明らかにしたい。

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