「続堕落論」の論理と回路

山崎義光

 「続堕落論」を中心に、その論理とその展開可能性について考究し、問題提起としたい。「続堕落論」では、「健全なる道義」として「カラクリ」となった「農村文化」や「武士道」「天皇制」、そして「世界連邦論」が取り上げられている。「農村文化」については「土の中からの話」、「武士道」は「堕落論」、「天皇制」は「堕落論」「天皇小論」、「世界連邦論」は「咢堂小論」そして「戦争論」(1948)などでも論じている。一方、そうした社会的な法や制度や道徳、イメージとして共同主観化され通俗化された「カラクリ」から「堕落する」こと、そして「人間の、又人性の正しい姿」を書くのが「文学」であると述べていた。「カラクリ」に共同化されない「孤独」な「個」は、カラクリ=「着物」を脱して「裸」になることと語られる。「個」をめぐっては「エゴイズム小論」と関連する。同じ頃の小説「白痴」「女体」「恋をしにいく」では、「恋」と「肉体」をめぐり、「男」にとって、憑かれながら把握しきれない残余としての「女」の他者性が描かれる。これらテクストの回路から考えたい。

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