創作メルヘンおよび創作説話にみる超自然的美
――『桜の森の満開の下』、『紫大納言』、『ウンディーネ』の比較より――

クリストファー・シェレター
池中愛海

 我々の発表のテーマは、安吾の『桜の森の満開の下』と『紫大納言』、そしてフケーの『ウンディーネ』における女性の描写、すなわち、彼女らのこの世ならぬ美しさをめぐるものである。これら三作品には確かに空間的および時間的差異があるものの、我々は今回、これらの作品が同じ文学ジャンルに属すること、特に中心となる女性の造形に類似点が認められることに注目し、彼女らの美の有り様を明らかにしたい。
ドイツのロマン主義文学にはグリム兄弟に代表される民間童話(Volksm?rchen)が数多くある一方で、独自のメルヘンを書いた作家も存在する。彼らの作品は創作童話(Kunstm?rchen)と呼ばれるが、安吾もまたこの創作童話、厳密には〈創作説話〉の作家であると考えられる。上記の三つの創作童話を比較すると、中心となる女性たち全員が神話・伝説との関連を持つことがわかる。この事実は、彼女たちの超自然的な美にも寄与している。さらに発表では、彼女らの美を構成するさらなる観点について、安吾ならびにポーの美学にも言及しつつ述べていく。

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